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【日本最小ラガーマンが語る豆の眼力】実はこんなに詰まっていた!日本代表トライシーンをプロレベルで紐解く。

6月17日に行われたアイルランドと日本代表の1戦。
22-50で敗れはしたものの、注目すべきシーンがいくつもあった。
そんなプレーを元7人制ラグビー代表の首藤甲子郎氏に解説してもらった。

Ellis Web編集部

1.対アイルランド代表第1戦で奪った価値ある2トライ

去る6月17日に行われたアイルランド戦。2019年日本開催W杯でも戦うことが決まっている相手だ。

スコアこそ22-50と離れたが、日本代表は後半20分にFB野口竜司選手(背番号15)が、後半37分にはWTB福岡堅樹選手(背番号11)が印象的なトライを決めた。

フォワードの頑張りやハーフ団の正確なキックがあってのトライであることが前提としてあるが、この2つのトライにはFB野口選手とWTB福岡選手の素晴らしい個人技が凝縮されていた。

今回はこの2つのトライに隠された個人の洗練された技術を紐解いて解説する。

2.まだ大学生、野口選手のトライを個人技から紐解く

まずは、FB野口選手のトライから解説する。後半20分、キックを使った攻めをしたことで相手DFが外に開きだしたところでのトライ。

SH流大選手(背番号21)のテンポの良いパスを受けたFB野口選手。このトライには全部で5つの技術が凝縮されていた。
 
1つ目はポジショニングの技術だ。FB野口選手はこの時、相手DFのやや外側へポジショニングしていた。これにより相手DFの意識を外に向けたのだ。
 
続いて2つ目の技術は、「目のフェイント」だ。FB野口選手はボールをもらう前、ほんの一瞬だけ目で外を見た。このフェイントで相手DFの意識が外に向く。

さらに外には突破力のあるNO8リーチマイケル選手 (背番号6)とWTB松島幸太朗選手(背番号14)が待っていたので、完全に相手DFの意識を外に向けさせることに成功した。1つ目の技術も併せて、この時点で目の前のDFのマークを目だけでずらしたことになる。
 
3つ目の技術は2人目DFへの意識だ。FB野口選手はワンステップで一人目の相手DFを交わし、ツーステップ目を切る前にはすでに顔と体は2人目のDFに対して準備をしていた。並みの選手であれば自分の目の前のDFにターゲットを絞り勝負する場面。

しかし彼はそれをせず、2人目のDFとの勝負を意識していた。更に言うなればこれがゴール目前のプレッシャーがかかる状況でのプレーというのだからすごい技術である。
 
4つ目の技術は的確な位置へのハンドオフだ。FB野口選手は全力でタックルにくる相手DFに対して、胸から肩のラインに対してハンドオフを繰り出した。

このように的確な位置かつタイミングの良いハンドオフにより、相手DFの力を半減させて相手のタックルをかわしたのだ。
 
最後は、タックルをかわした相手DFの手が自分の足に絡みついてくる前に足を高くあげて振りほどいた場面だ。あの一瞬の場面でFB野口選手は完全に相手DFを抜き去った。

意識してのプレーか分からない。しかし間違いなく技術として身についているプレーだからこそ瞬時に繰り出せた技であり、日頃の練習の賜物といえるトライであった。
 
FB野口選手はまだ21歳。2年後のW杯に向け今後のパフォーマンスに大きな期待がかかる。

3.日本のトライゲッター、福岡選手のトライを個人技から紐解く

続いては、後半37分のWTB福岡選手のトライについても解説してみたいと思う。今回はWTB福岡選手の3つの技術に注目してご紹介する。

まず、1つ目の技術についてだが、やはりポジションニングだ。WTB福岡選手は、自分にボールが渡る前、相手DFが自分より内側の選手に詰めて飛び出してきた瞬間にわずかではあるがポジショニングを変えていた。

詰めるディフェンスに対して、味方が内側に短いパスを放る予測をした上で、自らの走るスピードを最大限に引き出すことができるポジションに移動したのだ。これにより体制が整った状態でパスを受けることができ、初動の加速力が最大限に生きた。
 
2つ目はスワーブと呼ばれる技術だ。WTB福岡選手はボールをもらって走り出したほんの一瞬だけ、ランニングコースを相手DFの内側に変えた。これにより、相手DFの選択肢が増え、無意識のうちに足が一瞬止まったはずだ。
 
この方向転換こそ自分の勝負する外側のスペースを確保し、彼のスピードを最大限に発揮することを可能にする。スワーブと呼ばれる技のお手本と呼ぶべきプレーであった。
 
この2つの技術だけでも並大抵の選手ではないことがお分かりいただけるだろう。しかし、彼の凄いところはそれだけではない。
 
3つ目の技術はスタミナである。前後半合わせて約80分戦ってきた最後にあれだけのスピードでトライを奪った。前半幾度となくキックチェイスを行っており、普通の選手であれば完全に足が止まる時間帯。

そんな場面でも自分の武器であるスピードを生かせることは日頃のトレーニングをいかにハードに行なっているかが分かる。元々福岡選手のスピードは世界レベルだ。その上でこれらの技術も兼ね備えているのだから末恐ろしい選手である。

4.結局は個人の力×組織の力。次戦への展望について。

いかがだっただろうか。見ている分にはスッと抜けたように見えるが、そこにはこんなにも多く、複合的に個人スキルが発揮されていたのだ。

次戦、24日にはまたアイルランドとの2戦目が待っている。今回、通用したものだけでなくまだまだ日本代表には多くの可能性がある。チームとして勝つことはもちろんだが、個々の技術でも世界と戦えることを証明してくれるだろう。次戦はこのような「豆の眼」を持って各プレーを見てみてはいかがだろうか。