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【日本最小ラガーマンが語る豆の眼力】ラグビー界の「忍者」トヨタ自動車・ジェイミー選手

17-18シーズンのトップリーグも残すところ数試合となった。今回は日本選手権を兼ねた順位決定戦の準決勝ひと試合から一流の技術を紹介する。注目の選手はトヨタ自動車ヴェルブリッツのWTBヘンリー・ジェイミー選手(No.11)だ。ジェイミー選手は「忍者」顔負けの状況判断と身のこなしでチーム唯一のトライを奪った。

Ellis Web編集部

1.大詰めを迎えたトップリーグ

ラグビーの日本選手権を兼ねたトップリーグ(TL)の決勝トーナメントは上位4チームの争いとなった。
7季ぶりにトップ4入りしたトヨタ自動車ヴェルブリッツとリーグ戦13戦全勝のパナソニックワイルドナイツが相見えた準決勝の1戦。結果は17―11でパナソニックが競り勝ち、2季ぶりの優勝に王手をかけた。

2.ジェイミー選手が見せた一流のプレー

決勝進出をかけたこの試合で、一流のプレーを見せてくれたのはトヨタ自動車ヴェルブリッツのWTBヘンリー・ジェイミー選手(No.11)だ。チーム唯一のトライをもたらしたこのプレーは17-3とパナソニックリードで迎えた後半16分に生まれた。

首藤甲子郎氏

3.クロニエ選手のお膳立て

まずは、このプレーをお膳立てした、トヨタ自動車SOライオネル•クロニエ選手(No.10)の状況判断に触れて起きたい。

パナソニック陣内22m付近の中央スクラムから、右にサイドアタックを2度仕掛けたあとの攻撃。左へ展開されたボールはクロニエ選手へパスアウトされた。

そこからクロニエ選手は相手DFラインの状況を把握し、大外へスペースがあることを確認。すると瞬時に「2人飛ばし」のパスを出し、大外で待ち構えるジェイミー選手へとボールを繋げたのだ。

4.ジェイミー選手の「目線」と「体の向き」

この時、クロニエ選手からのパスが少し浮き、ジェイミー選手はジャンプキャッチをしなくてはならない状況であった。通常であれば、ジャンプキャッチの難易度はそこまで高くはない。
しかしキャッチのあと、着地の瞬間に相手DFにタックルされ、タッチに押し出されてもおかしくないというプレッシャーが難しい状況を作り出す。
ここで注目してほしいのは、ジェイミー選手の「目線」と「体の向き」だ。
彼は、キャッチを成功させた次の瞬間、まだ体が空中にある状態にもかかわらず相手DFの動きをしっかりと確認し、さらには、着地する瞬間に半身になっていることが確認できる。

首藤甲子郎氏

5.DF心理の裏をかく

一方、DFの心理はこうだ。

「着地した瞬間にタックルで押し出そう」
着地した瞬間、相手のパワーが残っていないタイミングでパワーを伝えることができれば確実にタッチラインの外に出せるのだ。

DFにとってはまさに絶好のチャンスで、一気に間合いを詰めたくなる。このDFの心理状態と動きを、ジェイミー選手は見逃さなかった。

相手DFが一気に間合いを詰め、頭が下がった瞬間、半身になっていた自身の体を瞬時に半回転させロールを成功させたのである。反対にDFは力の伝える場所を失い、まさに「肩すかし」をくらった状態となる。
ジェイミー選手は「狭いスペースで勝負する」一流の技術を見せたのだ。

6.「忍者」と化したジェイミー選手

この半回転の動き、ラグビーファンならば見覚えがあるはずだ。そう、2015年ラグビーワールドカップのサモア戦で日本代表の山田章仁選手が見せた「忍者トライ」である。
ジェイミー選手は山田選手顔負けの技術で目の前の相手を抜き、さらに迫り来るバッキングDFに対しても絶妙なタイミングのハンドオフで落とし、そのままインゴールまで駆け抜けた。

7.最終戦でも忍者が現れる?

今回、ジェイミー選手が見せてくれたこの技術、簡単そうに見えるが、実はなかなか難しい。まず、相手の重心の位置を正確に把握し、次に相手の力が自分のどこにかかってくるのかをイメージする必要がある。

さらに、イメージした力の軌道に対し自分の体重をいかにコントロールし移動させるかを瞬時に考え実行しなければならない。 そして舞台は勝てば日本一への挑戦権を手にするという大一番。プレッシャーのかかる状況で、これだけの技術を見せたジェイミー選手は現代の忍者である。
いよいよトップリーグも最終戦となる。決勝でも勝利をたぐりよせる忍者が現れるのか。是非、会場で見届けてみてはいかがだろうか。

文:首藤甲子郎
編集:Ellis Web編集部
撮影協力:延原ユウキ