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【日本最小ラガーマンが語る豆の眼力】世界レベルの技術!日本代表2選手のプレーをプロレベルで紐解く。

6/24に行われたアイルランド代表との第2戦。負けはしたが、日本選手の個々の能力が世界に通用することを証明したシーンも随所に見られた。
今回はほんの一部ではあるが、CTB松島幸太朗選手(背番号13)のトライと日本代表エースWTB山田章仁選手(背番号11)のプレーを豆の眼力をもって説明していきたい。

Ellis Web編集部

1.CTB松島選手だからこそ生かせた技術とは

まずは、前半23分CTB松島選手のトライを解説する。
ここには3つのテクニックが凝縮されていた。

1つ目の技術はポジショニングだ。

敵陣ゴール前でできたラックから、テンポよく出てきたボールがSO小倉順平選手(背番号10)の手を渡りCTB松島選手に渡る瞬間、彼は目の前の相手選手の外側にポジショニングを取っている。この時点で体半分マークをずらすことに成功している。

さらに本来一番大外に位置する選手は、たいてい大外のタッチライン際にポジショニングをするのだが、CTB松島選手はあえてそれをせず、自分のランコースを大外で確保するポジョニングをとり、勝負する状況を作り出していた。

2つ目の技術はグースステップである。

グースステップとは、変則的な足の動きを使い、相手の足が止まっている瞬間に自分は加速していくというスピードの緩急を用いた技術である。

この技術は練習をすればある程度のレベルまでは上達することができる。しかし、CTB松島選手のようにテストマッチ(国と国との真剣勝負)でこの技術を使い、トライを取りきるレベルまで向上させるには、並みの選手ではできない。

たくさんの努力と多くの経験を経てはじめて出せる技術。彼だからこそ生きた技術である。

3つ目の技術はハンドオフだ。

ハンドオフとは相手のタックルをかわす技術であるが、CTB松島選手がすごいのは瞬時にハンドオフの出し方を変えたことだ。

具体的に説明するとCTB松島選手はグースステップによりタイミングをずらした後、ワンテンポ遅れたディフェンスが腰より下にタックルに来たところに対し、通常の相手の方へ押し返すハンドオフではなく、ベクトルを下に向けて相手の肩を真下に落とすハンドオフを使用した。

これにより、相手の力はCTB松島選手にかかるのではなく地面に向かって落ちている状態になる。

今回の場面で一般的な相手の方へ押し返すハンドオフを使った場合、体は半身ずれていたとしても、低い状態でタックルに入ってきたアイルランド選手の方が力の伝え方という意味では優位になりタッチラインを割ることになっていたかもしれない。

そこで瞬時にハンドオフの出し方を変えたCTB松島選手の技術が勝ったトライであった。

2.日本代表のエース・山田選手がトライ以外で見せた技術とは

次に解説するのは、日本代表エースWTB山田章仁選手(背番号11)のあるプレーだ。

WTB山田選手といえばトライである。今回の試合でも、ポジショニングと相手ディフェンスのギャップを見逃さず、鋭い嗅覚でキックボールに反応しトライを決めた。

トライが代名詞の彼の技術は、実はトライ以外にも山ほど見ることができるのだ。

注目のプレーが前半38分、WTB山田選手がCTB松島選手にオフロードパスを放ったシーン。ここには日本代表エースの3つの技術が凝縮されていた。

まず、1つ目はダミープレーの技術である。

自陣22メートル付近のラックからLOトンプソン・ルーク選手(背番号4)を経由しWTB山田選手にボールが渡った瞬間。WTB山田選手は瞬時に自分の前の状況を認識し、キックをするモーションにあえて入った。

その一瞬のモーションに、WTB山田選手の前の相手DFはキックを蹴ってくると思い微妙にディフェンスコースを変えた。

この瞬間をWTB山田選手は見逃さずに相手DFを抜き去ったのだ。彼の持っているオプションの多さが敵のディフェンスの混乱を生み出したのだ。

2つ目の技術は視野の広さだ。

前述のキックダミーで目の前のディフェンスを抜いた後、WTB山田選手は本当に一瞬だけCTB松島選手の位置を確認しているのである。

この瞬間、彼の選択肢の中にCTB松島選手を生かすというオプションが生まれたのだ。

内側から相手のDF選手が2人、WTB山田選手にタックルにきているのだが、この後のCTB松島選手のフォローコースは、その2人の選手のさらに内側のディフェンスが誰もいないところだった。

この一瞬の間に、相手ディフェンスの動き・ポジショニング、さらには味方のフォローコースまでも目で確認し計算しているのだ。この視野の広さもまた、技術である。

3.突出したボディーバランスがなせる技術とは

そして3つ目の技術はコンタクトポジションだ。

前述の視野の広さによって得た情報で内側のDF2人を引き付ければCTB松島選手を生かせると判断したWTB山田選手。

タックルに来た相手DFに当たりにいくのだが、ここにも細かな技術が隠されていた。

一見単純に当たりにいっていりようにみえるが、実はオフロードパスをオプションとして生かすための当たり方をしているのだ。

その当たり方とは重心を当たる直前で低くすること。

これには自分より大きな相手DFが自分の上半身にタックルにこないようにするという意図がある。

この重心移動により、相手のタックルポイントはズレる。さらにWTB山田選手は重心が低くなったことで推進力が生まれ、前に一歩前進することができるという状況が生まれた。

上半身はフリーに動かすことができるためボディーコントロールを失うことなくスペースを保ったまま、狙い通りのコースに入ってきたCTB松島選手へオフロードパスをすることができた。

これにより、CTB松島選手がビッグゲインをすることができ、チームとしてもアイルランド陣内へ入る大きなゲインとなった。


この一連の動作は理屈ではわかっていても実はそう簡単にはできない。

というのも、相手は世界の強豪アイルランド代表だからだ。

それでも、彼が狙い通りにこのプレーができたのは、彼の突出したボディーバランスがあってのこと。想像もできない日々の努力があってこそ成せる業なのだ。

4.世界レベルの技術を見せた日本代表。2019年に向けて。

いかがだっただろうか。

今回、2戦ともアイルランド代表には敗れた。しかし独自の視点から見た個々の技術を解説するうちに、彼らの技術は間違いなく世界レベルであることを再認識することができた。

まだまだ課題は多くあるが、彼らが見せてくれるその高い技術に私は心から敬意を表する。

今はまだ、結果はでないかもしれない。しかし19年のW杯に向けて彼らの技術がまた世界を驚かせてくれる日が、近い将来に見られるような気がしてならない。

文:首藤甲子郎