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【日本最小ラガーマンが語る豆の眼力】日本代表・レメキ選手が見せた雨にも適応する技術

代表戦が多く組まれるこの時期。2年後に迫るW杯を見据え、質の高いプレーが求められる。10月28日は悪天候という難しい状況でのプレーとなった。そんな中、日本代表WTBロマノ・レメキ選手が雨の中で見せてくれた卓越した技術について首藤甲子郎氏が解説する。

Ellis Web編集部

1.世界選抜と対戦

トップリーグが休止期間になるこの時期は、代表戦が多く組まれる。 10月28日、ラグビー日本代表は福岡レベルファイブスタジアムで世界選抜と対戦した。

世界選抜は五郎丸歩選手やトップリーグで活躍する強豪国の元代表選手など世界7カ国からなる混成チームだ。台風の影響で雨が降りしきる中での試合となったが、結果は27-47で敗れ、力の差を見せつけられる形となった。

今回はその中でも日本代表WTBロマノ・レメキ選手(背番号14)のあるプレーにフォーカスし解説していきたい。

©Honda HEAT

2.帰ってきた「日本の翼」ロマノ・レメキ選手

レメキ選手は、昨年のリオ五輪では7人制日本代表のエースとして君臨し、ベスト4進出の立役者となった。

さらに昨年の11月のアルゼンチン戦で15人制の代表デビューを果たし、その後のジョージア戦で代表デビューから2試合連続トライを記録するなど、日本代表の新戦力として大きく期待された。

しかし、そのジョージア戦で「前十字靭帯断裂」という大ケガを負ってしまう。レメキ選手は長く辛いリハビリを乗り越え、7月上旬に異例ともいえる早さで戦列復帰。 今回、満を持して日本代表に戻ってきた。

3.雨の中でも安定したボディーコントロール

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この試合、久しぶりの代表復帰を果たしたレメキ選手は、ブランクを感じさせない動きで存在を十分にアピールする。

この日の試合は雨。多くの選手が足を取られる劣悪なグラウンドコンディションの中で、レメキ選手はある技術を披露する。
注目のプレーは後半48分。
元々、相手選手との間合いギリギリで切れ味鋭いステップを武器としているレメキ選手だが、この試合ではステップのタイミングを普段よりも早めに変化させているのがわかる。

なぜ、ステップのタイミングを変える必要があるのか。
ぬかるんだグラウンド状態では、いつものような切れのあるステップやその後のスピードチェンジを行うことは至難の業で、普段の感覚でプレーをするとスリップしてしまう。

しかし、そこで普段よりも早めにコースを変え、ステップを踏み、緩急をつけたレメキ選手。これによりに相手選手は足元が安定しないため反応が遅れてしまう。レメキ選手だけが、安定したボディーコントロールを見せることができるのだ。

4.相手が順応…レメキ選手が見せた「変化」

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そして、最も注目すべきは、後半ロスタイムのトライに繋がったレメキ選手のビッグゲインだ。
相手は強豪国の元代表選手がほとんど。後半ともなれば、レメキ選手の動きにも慣れてきて、徐々にその間合いを詰めてきていた。そこで、レメキ選手はステップの間合いを本来の自分の得意な間合いにチェンジしたのである。
ショートサイドでボールを受けたレメキ選手は、早めに勝負を仕掛けてくることを予測して飛び出してきた相手DFに対し、瞬時にギリギリの間合いで勝負を仕掛け、見事にかわして見せたのである。

このプレーで勢いに乗った日本代表は、そのままボールを継続し、最後はトライを決めることができた。

5.雨でもベストのプレーを

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ラグビーは室内スポーツとは違い、天候の変化にも対応していかなくてはならない。 ベストではないグラウンドコンディションの中でも、自分の思考と技術で武器にしてしまうレメキ選手は真のフィニッシャーと言えよう。 天候が良くない日には、今回のような普段は見られない細かな技術が隠されている。 雨の日こそ、選手と同じ気持ちで会場に足を運んでみてはいかがだろうか。

文:首藤甲子郎
編集:横澤樹
トップ画像:©Honda HEAT