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【日本最小ラガーマンが語る豆の眼力】 7人制期待のホープ、後藤輝也選手の技術を紐解く

7月2日に行われたライオンズ戦。残念ながらサンウルブズは大敗してしまった。しかし、豆の眼力は勝敗ではなく個々の選手の素晴らしい技術に着目し日本ラグビーの素晴らしさを発信していきたいと思う。今回のライオンズ戦で注目すべきはWTB後藤輝也選手(背番号11)のあるプレーだ。WTB後藤選手は私の元チームメイト。彼の技術がいかにすごいのか、彼が調子に乗らない程度に豆の眼力で解説していきたい。

Ellis Web編集部

1.トライを防いだセービングタックルに垣間見える技術とは

首藤甲子郎氏

注目のプレーとは前半25分、自陣インゴールライン寸前でトライを阻止したタックルと後半41分、自陣ゴール前でのトライを防いだタックルである。

WTB後藤選手が相手選手にお見舞いしたこの2つのセービングタックルには4つの技術が隠されていた。

1つ目は、リアクションスピードの速さである。ここでいうリアクションスピードとは、ピンチになった瞬間の切り替えの速さと動き出しのスピードのことだ。

WTB後藤選手は相手にゴールに迫られた瞬間に、自チームの誰よりも早くその一歩を踏み出している。この一歩の速さこそ、トライ寸前のところで相手を仕留められるタックルに繋がるのである。

2つ目の技術はタックルスピードである。普通の選手ならばタックルに入る際、人間の防衛反応なのか、一瞬脚が止まるものである。

しかし、WTB後藤選手の場合は、むしろ加速しているようにも見えた。このようにタックルの瞬間にスピードを上げることの利点は2つある。

1つは相手の懐に入りやすいということ。

2つ目は、相手に自分のパワーを十分に伝えることができるということだ。

体の小さな日本人選手が100kgを超える外国人選手に戦っていくためには、WTB後藤選手のように自分からスピードをあげてタックルに入ることが必要かもしれない。

続いて3つ目はタックルの時、体を安定させる技術だ。

まず、WTB後藤選手はスピードを加速させ相手の懐のギリギリまで接近する。この時WTB後藤選手は最後まで相手の動きを確認している。

その後、相手の腰辺りを掴みに行くのだが、掴みきったことがわかるとすぐに片方の手は相手の足を取りにいっているのである。

ここで、WTB後藤選手に腰を掴まれた相手選手はその後どうするのかというと、
その腕を振り払うべく大きく足を上げようとする。

しかし、そこで待っているのがWTB後藤選手の片側の腕なのだ。WTB後藤選手の腕が、大きく上げた相手選手の脚を刈ることで、相手選手はそのままバランスを失い、倒れるというわけだ。

一方、この状況でWTB後藤選手の体は安定した状態を作ることができる。

キーワードは「遠心力」だ。

WTB後藤選手は、前述したスピードとさらに、少し角度をつけてタックルに入ることで遠心力を生み出すことに成功する。

そしてこの遠心力を利用し、内側の脚を軸とし、外側の脚を大きく振り子のようにすることで次に立ち上がれる状態を素早く作り出すことが可能となった。

2.大きな選手を倒すには…WTB後藤選手が体現

4つ目の技術は「ハンドオフ落とし」だ。

これは後半41分、相手のFLクリエル選手(背番号6)にタックルしたシーン。実はこの時、WTB後藤選手はタックルに入る際、相手選手が出そうとしたハンドオフを瞬時にはたき落としているのである。

一瞬の攻防のため、見落としている方もいるかもしれない。

この技術は私たちには馴染みのあるプレーなのだが意識をしなければ中々お目にかかれないプレーである。

では、ハンドオフ落としを食らったFLクリエル選手はどうなるのか。

本来弾こうとして出したハンドオフのベクトルが一気に変わるのだから、バランスを保つのは簡単ではなくなる。その証拠に、クリエル選手の体はほんの一瞬だけ斜めに傾いていることが確認できる。

この一瞬の隙を後藤選手は見逃さなかった。相手選手の体が崩れた隙に体を寄せてタックルに入っているのだ。これこそが小さな選手が大きな選手を倒す一つの技である。

WTB後藤選手はそれを見事に体現した 。

Maxisport / Shutterstock.com

3.7人制オリンピアンの「経験」に今後も期待

ここまでWTB後藤選手の卓越したタックル技術を解説してきた。

少し褒めすぎてしまったところはあるが、決して大袈裟ではない。

世界のトッププレーヤーと対峙し、平常心でいられることが難しい状況の中でのプレー。さらに相手は100kgを越え、なおかつトップスピードのコンタクトプレーが起こるこの場面でこれだけの技術を駆使して戦うことは容易ではない。

しかし、7人制のオリンピアンでもあるWTB後藤選手は、7人制の大会で得た経験を生かしてプレーしていた。

15人制よりも1対1の局面が多く演出される7人制はまさに技術の見せ合い。

多くの経験の中で作り上げられた彼の技術が日本のピンチを救ってくれることを今後も期待し、声を大にして叫びたい。

頑張れ!!ゴトゥー!!
頑張れ!!サンウルブズ!!

文:首藤甲子郎